本物の住まいを手に入れるには?
今日は、とてもよく晴れた日曜日。
先週、山をしっかり歩いたので 今日はお休み。
庭の雑草と格闘の日々です。
さて。
これは、築30年ぐらいの住まいの写真です。
30年前の住まいは、内部はほぼ新建材でした。
みんながそんな家を作ってた。
新建材というのは、それまでの「無垢」の木に対してできた言葉で、ベニヤ板の上に化粧板や印刷した紙を張った安価な製品です。
それを、下地の木材(30mm角や40mm角、45mm角等)の上に、化粧釘や、接着剤で張り付けていきました。
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内装材がすべてそうで、たとえば 床はフロアーパネルと言われる、市松の貼り物の寄木フロアで、厚みは12mm。
それが、やがては フローリングと呼ばれる物に代わっていった。
高級=傷がつきにくい という観点で考えられていて。
固くて冷たくて、そして高い。
今の無垢の杉や桧のフローリングよりもずっと高いものもありました。
壁は、プリント合板(4mm)や、銘木合板(5mm)。
プリントは名の通り印刷で、銘木は薄い本物の木材をベニヤ板の上に貼りつけている物。
天井は吸音テックスや化粧石膏ボード等。
アルミサッシは、普通のシングルガラスで、サッシの額縁は木製(ラワン等外材)でした。
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今、リフォーム適齢期はそんな家。
工場で作られたそれらの製品は、ほとんどみすぼらしく変化しています。
はげたり、色あせたり、ヒビが入っていたり。
本物なら、いい味が出てくるんですけれど。
日焼けや傷が経年変化によっておこる美しさです。
さらに当時は、床の下地は根太のみで、下張のコンパネ等はありませんし、断熱材も入っていません。
断熱材を入れるようになったのは、住宅金融公庫の仕様の力が大きいです。
それでも、グラスウールの50mmが入った程度でした。
それは、昭和50年代半ばぐらいから。
初め、壁と天井にグラスウールの50mmが義務付けられて、床は 最後だったと思います。
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住まいの仕様にも流行があって。
それは、ハウスメーカーが主導権を握ってる?
つまり、ハウスメーカーは、すべてが工業製品ですから。
これは、最近のハウスメーカーの家。
でも、今や、住まいの内装も、建具も、設備も、外壁も、すべて工業製品。
木造住宅でも、メーカーが建材屋を通して、売り込みに来る。
「こんな、いい製品が出たから使ってください。」みたいに。
それで、どこが建てても同じようなものができる。
今は、内壁もビニールクロスが主体なので、これももちろん工業製品ですよね。
現場作成の物は、基礎と、木材(構造材)の組立てぐらいでしょうか?
後は、材料を組立てて行く。
そういう家は、大工さんの工賃も抑えられているので、やっつけ仕事になりがち。
左官工事(タイル工事)と言えば、今はポーチの土間のタイルぐらいしか、ありませんから。
昭和50年代よりも、さらに進んで、アルミサッシの額縁、天井の廻りぶち、幅木等、全部貼りものだし。
室内建具もほとんどは、MDFに木目の樹脂シートを貼りつけて、木に見せているだけ。
消費者の、「掃除がしやすくて、値段の安くて、見た目がきれいなもの」というニーズに答えて行った結果でしょうか?
それとも、「クレームの来ない物」という企業側(造り手側)の、「反ったり、すき間ができたりしない。」という価値観か?
それが、やがては 「自然素材は贅沢(高価)だし、クレームが多い」から 使わなくなっていった。
消費者は、もう、そういうもので家を作ることはできないと、あきらめているのでは?
今の家はこういうものだ、と。
ハウスメーカー等の展示場に毒されているとしか思えない。
まあ、設備とか、昔より良くなっているものもありますが、所詮、「設備」です。
どんなに高級なものを使っても、水回りの設備等は 良くもって 15年でしょう。
そのころには、リフォームの必要が出てきます。
だから、そこに数百万もかけるのは もったいない。
きっと、もっといいものが出てきます。
中の下ぐらいで ちょうどいいのです。
それより、後から交換できないもの(構造とか断熱、雨漏りしないこと)に、お金をかけるべきなのです。
どうか、目先に惑わされないで。
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この、工業製品で、家を作りだしたのは、昭和40年代ぐらいからでしょうか?
住まいがプラモデルみたいな、高額で壮大な「おもちゃ」に変化して行った。
たかだか、30年ほどで、作り替えなければもたないような物に。
何千万もするのに。
商売の「手段」になってしまった。
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そんなプラスチックの箱みたいなものに入って生活して、気持ちいいでしょうか?
慣れてしまうと、そんなもんだと思うのかもしれませんが。
住まいとは、そこで、寝て起きて、食事作って、食べて、休んで、くつろいで、自分の生活の基地なんですよね。
ただ、何もしなくても、疲れが取れ、癒されて、明日への力がわいてくる。
そんな、場所にしたい。
本物の材料を使って、腕のある職人の手で作ってもらいたい。
新建材で柱を覆ってしまうのではなく、節があっても、本物の木が見える仕様にしたい。(真壁といいます。)
ただし、外部は断熱材を入れたいので、真壁は無理ですけど。
それって、現代では難しいことでしょうか?
私は、そうは思いません。
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商売の手段、金儲けの手段のひとつとして、攻めてこられるものを、何も考えていなかったら、そちらに 押し流されてしまいます。
ちゃんと、目を開いて、調べて、勉強して。
どうやったら、手に入るか考えて。
本物は高い・・・・。そうでしょうか?
じゃあ、偽物は安い?違うと思います。
偽物でも、高いです。
偽物自体は安くても、そこに 商売上の「儲け」等が入る余地があるので。
本物も、自分でできるところはセルフビルドして、少しは安く手に入れることはできます。
プロがやるほどの完成度はなくても、できることはあります。
もちろん、プロでないとできないこともたくさんあります。
でも、直接家を作るのに関係ないところ(営業経費や、宣伝費)等に、なるべくお金を払わず、正当な報酬には、払いたいものです。
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それには、勉強するしかありません。
営業マンや美しいカタログ、展示場に惑わされないで、気持ちを強くもち、あわてず、ゆっくり、本物の住まいづくりをしてください。
新建材が流行る前の家。
戦前の家は、本物で作られていました。
我が家も築70年だから、そうですが、無垢の木で作られた床。
左官さんが塗った大津壁。
今もそのまま生きています。
本物は 寿命が長いのです。
新建材を使わずに作った家は、デザインさえ良ければ、50年たっても おかしくないのです。
80年代に定期購読していた「住宅建築」という雑誌。
捨てようと思ったけれど、中を見たら、今でも通用する住宅が多かったので 驚きました。
特に和風住宅。
その後の、ハウスメーカーが多く載っている雑誌は、もう、時代遅れで、残しておきたい本ではありませんでした。
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ヨーロッパの古い街並みを見たとき。
京都の伝統的な街並みを見たとき。
伝統的なものは、100年経っても、変わらない美しさがあると思います。
昔から使われている材料。
たとえば、木材や漆喰、和紙とかタイル、石等は、今まで残ってきたということで、建材として優秀であることを時代が認めています。
誰が、何と言おうと。
いいものしか、100年も残っていかないのです。
*
今の「長期優良住宅」を考えるとき。
デザインは、条件にありません。使い勝手も。
だって、美しさや間取りの使い勝手等は、規定できない。
耐震性や、断熱性等、性能は規定できます。
性能も、ももちろん大事ですが、100年たったときに 「古臭くないもの」って、それはやはり、伝統的なものではないのかな。
昔からあるものは、時代が変わっても、人々を納得させる「何か」があります。
デザイン的(特に外観)は、伝統的なものにしておく。
庇は長く。
屋根はなるべく瓦。
デザインはモダン過ぎない。
周囲の街並みに違和感がなく 溶け込むことも大事です。
こういうのが、本当に「長期優良住宅」ということになるのではないか?と 改めて思いました。
住まい自体は、100年前とは違いますから、安全性や快適性も必要です。
健康にも配慮したい。
本当に「居心地の良い住まい」とは何か?
私も心して、そういう住まいを作るように考えなければ。
流行に押し流されずに・・・
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